鈴木英明
Szuki hideaki
日本学術振興会特別研究員PD(受入機関:東洋文庫)
私はこれまでインド洋海域世界という海をその中心においた人々の繋がり合いの歴史を勉強してきました。現在ではペルシア湾岸やインド北西部でも調査をしていますが、最初に注目したのが、アフリカ大陸東部沿岸のスワヒリ世界と呼ばれる世界です。ここは古くからインド洋を股にかけた交易圏の一部で、人々は内陸部と海を跨いだ地域との橋渡し役を担いながら、そうした繋がりのなかで育まれた独自の文化を築いてきました。修士までは特にこのスワヒリ世界の中世史について、遺構やアラビア語文献を用いながら勉強しました。2010年に提出した博士論文では、19世紀を対象にして、このスワヒリ世界や内陸部の人々を含みこんだ繋がり合いとしてのインド洋西海域世界の実像と特にそこにおける奴隷交易に携わる人々の変容を論じるなかで、そこに見出せるこの海域世界の「近代」を考えました。現在は、国家や民族や宗教などによって細分化されない世界史像を考えるべく、人々の生業や繋がり合いのサイクルに着目しながら、アフリカ大陸の人々をそのなかでどのように位置づけられるのかということに取り組んでいます。
<主要業績>
「インド洋西海域と「近代」―奴隷の流通を辞令にして」『史学雑誌』第116編第7号、2007年、1-33頁.
「19世紀東アフリカ沿岸社会の奴隷制とジェンダー」粟屋利江・松本悠子編『人の移動と文化の交差(ジェンダー史叢書7)』明石書店、2011年、66-85頁.
「サイード・ビン・スルターン没後のアフリカ大陸東部領土相続をめぐる経緯―奴隷流通構造における沿岸部スワヒリ社会の機能変化に関する追論」『スワヒリ&アフリカ研究』第22巻、2011年、1-24頁.